~第一章~
十年前
「伊藤!」
「ヨー、加藤。 おまえ、席そこか? オレどこだろ。」
「おまえもっと前だけど、とりあえず、こっちこいよ!」
「さっすが大学の入学式ってスッゲーな。 人、多過ぎ。 でっ、桜桃女は?」
「桜桃女、まだ見ないなぁ。あいつのことだから、10時ジャストに来るんじゃねえか。 それよか、あれ見ろよ。 スッゲーいい女いるんだぜ。 さっきチラッと見えたんだけどチョーカワイイし。」
「頭しか見えないけど、いい感じじゃん。 これから始まるキャンパスライフが楽しみだなー。」
「残念でした。 通路の向こうは応用化学。 だから、学研都市学舎だよ。 こうやって合同式典でもなければ、もう会えないよ。」
「じゃあ、桜桃女は応用化学学科だから、あの女と会えるってこと? いいなぁ。毎日会えるんだぜ。 オレも応用科学にすればよかった。」
「バ~カ。おまえの頭じゃ、受かんねーよ。 桜桃女は頭いいから、それこそ首席で合格してんじゃねえか。」
「学研都市学舎なら遠くて、桜桃女にも、めったと会えないよな。」
「遠いだけじゃなく、こっちが夏休みを迎える頃にはヴィクトラル大学に一時留学だろ。 あっちで、物理と語学を習得してくるみたいだぜ。 オレたちが、二か月以上、休みで浮かれてる間も、ヤツはお勉強さ。」
「そんなに勉強してどうすんだ?博士にでもなんのか?」
「もちろん、大学院まで行くだろうから、博士号だけど、ほんとの博士じゃなくて、高校教師になりたいって言ってたな。」
「えっ!?教師? そんなにまでして、たかが、高校の先生かよ?」
「なんでもヤツの母方の親族が高校やってんだけど、進学校だったのに、ここんとこ有名大合格率が落ちてるんだって、おまえ知ってる?」
「ああ。ラカールだろ。」
「そうそう。年々、合格率落ちてるもんだから、受験生も減ってるんだって。 だから桜桃女のやつ、一日も早く先生になって、合格率上げて日本一になるって、意気込んでたな。」
「へーっ。やるんだろうな。あいつのことだから。 そんなビジョンがあるなら、忙しくてなおさら会えねーな。 次は卒業式かぁ? 」
「だろうな、なんだかオレはもっと会えないような気がする。」
「それにしても遅せーな。学籍番号ってアイウエオ順だろ。」
「そう。席順が学籍番号順だから、たぶんあの女が座っているあたりだと思うぜ。」
「オレもう自分の席に着くワ。あとでな。」
※特製前張り=美恥丘パット陰毛付き装着。(このフォトは微小説とは関連ありません)